火葬後にも残る医療器具「CVポート」「PICC」とは? ― その正体と火葬場でのリアルな現場対応

こんにちは!現役火葬場職員の火葬ディレクター™です。
現代医療の進歩により、がんや慢性疾患と闘う患者さんのQOL(生活の質)は大きく向上しました。その裏側には、高度な治療に対応するための医療機器の進化があります。

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はじめに

特に近年よく使われている「CVポート(中心静脈ポート)」や「PICC(末梢挿入型中心静脈カテーテル)」といったデバイスは、静脈から薬剤や栄養を長期間安全に投与するための医療器具で、多くの患者さんが終末期まで使い続けています。

しかし、それらの器具が「亡くなったあとの身体に残ったまま火葬される」ことがあるという事実は、一般の方にはほとんど知られていません。そして、その一部が高温の火葬炉でも燃え尽きずに残るケースがあるのです。

今回は、火葬場の現場で実際に見られる現象として、このCVポートとPICCが火葬後にどのように現れるのか、どんな対応がなされているのかについて、詳しく解説していきます。


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CVポートとは?

CVポート(Central Venous Port)は、化学療法や高カロリー輸液などを長期的に行う必要がある患者さんのために、皮下に埋め込まれる医療器具です。

金属(多くはチタン)製の小さな本体(100円玉程度)と、そこから心臓近くの大静脈に通じるチューブから成り立っており、見た目ではほとんどわからないようになっています。

使用時は、専用の針でポート部分を穿刺し、薬剤や栄養剤を体内に安全に届けることができます。感染リスクが少なく、繰り返し使える点から、長期治療において非常に重宝されているデバイスです。

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PICCとは?

PICC(Peripherally Inserted Central Catheter)は、上腕などの末梢静脈から挿入され、先端が中心静脈(心臓近く)まで到達するカテーテルです。

挿入には手術が不要で、皮膚の外にカテーテルが露出しているため、在宅医療などでも比較的簡単に管理が可能です。CVポートに比べて短期間の使用に向いており、抗生物質の点滴投与や一時的な高カロリー輸液などに使われます。

チューブ部分はポリウレタンやシリコン製で柔軟性があり、素材の違いが火葬後の残存状況にも影響を与えます。


火葬後に現れる「残る医療器具」

CVポートの本体はチタンやステンレス合金などの耐熱金属製であり、火葬炉の温度(通常800~1,200℃)でも燃え尽きることはありません。そのため、焼骨の中や火葬炉の台車や底のトレーから金属片として発見されることがあります。

これに対してPICCは基本的に樹脂素材で構成されており、ほとんどは燃え尽きてしまいます。ただし、接続部や補強部に微細な金属が使われていることもあり、ごくまれに小さな部品が残ることもあります。

火葬場では、収骨前に焼骨を丁寧に目視確認する中で、こうした医療器具の残骸を発見することがあります。


火葬場の対応とご遺族への配慮

火葬の現場では、こうした残存物が骨壺に入らないよう、火葬後の焼骨の確認作業は慎重に行われます。

場合によっては、火葬前にご遺族や葬儀社から「体内に医療器具がある」との申告を受け、事前に注意を払うこともあります。

発見された医療器具については、

  • ご遺族に説明のうえ返却する
  • 火葬場側で丁寧に分別・廃棄する

といった対応が取られています。ご遺族の意思を尊重しながら、故人が使っていた医療器具を「闘病の証」として取り扱うこともあります。


医療の進歩と火葬業界のこれから

これからますます在宅医療や高齢者医療が進んでいく中で、CVポートやPICCのような医療機器の使用例は増え続けると考えられます。

現場の火葬場では、

  • 死後残存する医療器具への知識と対応力の強化
  • ご葬家や葬祭業者との情報共有
  • ご葬家への的確で丁寧な説明と配慮

といった点が、今後さらに重要になってくるでしょう。


まとめ

CVポートやPICCは、患者さんの命を支えるために使われた尊い医療機器です。そして火葬後にもなお、その一部が姿を現すことがあります。

それは単なる「金属片」ではなく、故人の闘病の歴史、そして家族との時間の証でもあります。私たち火葬や葬送儀礼の現場に関わる者にとって、そうした存在を正しく理解し、丁寧に扱う姿勢が今後ますます求められていくことでしょう。

この記事が、医療と葬送儀礼の交差点について少しでも関心を持つきっかけになれば幸いです。

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