心臓ペースメーカーと除細動器について
心臓ペースメーカーや除細動器は、心臓の不整脈といった異常を補正し、生命維持に重要な役割を果たす電子デバイスです。これらのデバイスは体内に植込まれ、心臓の働きを支えます。日本不整脈デバイス工業会の情報によれば、日本ではおよそ40万人から50万人の心臓病患者が心臓ペースメーカーや除細動器を使用しており、年間で新たに約35,000人がこれらのデバイスを装着し、約25,000人が電池交換を行っているとされています。
心臓ペースメーカーは、心臓のリズムを制御するために使用される医療デバイスです。心臓は正常に拍動するために電気信号を必要としますが、異常がある場合、心臓のリズムが乱れることがあります。心臓ペースメーカーは、このような異常なリズムや不整脈を治療するために使われます。
心臓ペースメーカーは、電子装置であり、通常は胸部に埋め込まれるか、外部から取り付けられます。装置には、心臓のリズムを監視し、必要に応じて正常なリズムを維持するために電気的な刺激を送る機能が備わっています。
ペースメーカーの働きは、心臓の特定の領域に配置された電極によって行われます。電極は心臓の電気信号を感知し、それに基づいてペースメーカーが働きます。心臓の拍動が速すぎたり遅すぎたりするとき、ペースメーカーは正常なリズムを維持するために電気信号を送ります。
心臓ペースメーカーの埋め込み手術が必要な場合、一般的には局所麻酔を使用して行われます。手術中、医師は胸に小さな切開をし、ペースメーカーを埋め込むためのポケットを作ります。ペースメーカーはこのポケットに配置され、電極が心臓の特定の領域に挿入されます。手術後、切開部は縫合されます。
ペースメーカーは、バッテリーで駆動されます。バッテリー寿命は様々であり、通常は数年間持続します。バッテリーが消耗すると、交換手術が必要になる場合があります。ペースメーカーの電子部品は非常に信頼性が高く、多くの人々にとって安全かつ効果的な治療法となっています。
これらのデバイスはリチウム電池を使用して動作し、通常は約10年間使用することができます。使用期間が経過すると電池交換が必要になり、それが行われます。近年では、技術の進歩により、これらのデバイスはさらに小型化が進んでおり、心臓ペースメーカーはカテーテルを通じて心臓に直接送り込むことが可能になるとのことです。その結果、デバイスの破裂リスクも低減することが期待されています。
しかしながら、これらのデバイスが持つ一つの問題点は、火葬の際に破裂する可能性があることです。火葬の際には、理想的には遺体からペースメーカーや除細動器を取り外すべきですが、これは医療行為であり、専門的な知識と技術を必要とします。そのため、取り外しを行うことなく、デバイスが装着されたまま遺体が火葬場に送られることがしばしばあります。
火葬場での対応
火葬場での適切な対応は、安全確保に重要な要素となります。その対応策として、次のような事項が考えられます
- ペースメーカーや除細動器が破裂するまでの時間を理解すること。破裂するまでの時間は一般的に10~25分とされていますが、炉の構造や遺体の体重などにより異なるため、個々の状況に合わせて対応する必要があります。その間、窓から覗くことを避け、デレッキ操作などは行わないことが重要です。
- 必要に応じて防護装置を使用すること。破裂が起こる可能性がある期間内で、デレッキ操作などが必要な場合、防護装置(手袋、マスク、防護面など)を装着することが推奨されます。
- ペースメーカーや除細動器の装着事実を確認すること。火葬申告書にペースメーカー等の装着欄を設け、遺族や葬祭事業者に記入してもらうことが必要です。このためには、事前に葬祭事業者と協議を行い、具体的かつ科学的な情報を提供するパンフレットなどを用意し、事前申告の徹底を呼び掛けることが重要です。
まとめ
これらの対応策を踏まえ、各自治体は独自の方法で火葬申込書の記述項目を設定し、それを遺族や葬祭事業者に通知することで、適切な処理を求めることが望まれます。具体的には、申込書には遺体に埋め込まれたペースメーカーや除細動器の有無を記載する欄を設けるなどの対策が考えられます。
これらの対策が適切に行われることで、火葬時におけるペースメーカーや除細動器の破裂リスクを最小限に抑えることができます。なぜなら、ペースメーカーや除細動器は高温にさらされることで爆発や破裂の危険性があり、周囲の安全を脅かす可能性があるからです。
ご遺族や葬祭業者さんは、火葬申込書に正確な情報を記入することで、火葬場が適切な処理を行うための情報を受けることができます。また、火葬施設側は遺族から提供された情報を適切に確認し、ペースメーカーや除細動器のある遺体に対しては十分な準備を行ってご対応いたします。
したがって、各自治体は火葬申込書の記述項目を明確にし、ご遺族や葬祭事業者に周知すると共に、火葬施設側もそれに対応する体制を整えることが重要です。適切な情報提供と処理手順の確保により、安全かつ適切な火葬が行われ、関連するリスクが最小限に抑えられます。
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